最高裁判所第二小法廷 昭和43年(オ)119号 判決 1968年5月24日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人下光軍二、同正力喜之助の上告理由第一点ないし第三点について。
所論中、憲法二四条違反をいう部分は、実質は、原判決に法令違反のあることをいうにすぎない。そして原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠によれば、原判決の認定した事実、とくに、被上告人は昭和三〇年一〇月二日本件婚姻届を上告人の求めによつて婚約の証として作成して同人に交付しておいたもので、その届書を提出するさいは改めて被上告人と話合いをすることになつていたこと、同年一一月六日被上告人は、上告人およびその父からの婚姻届の訂正に対し、その訂正に応じなかつたこと、同三一年一月二日被上告人は父甲野三郎を介して上告人に対し本件婚約の解消を申し入れるに至り、その後右解消の申出を承諾しない上告人からの再三の申入に応ぜず、婚姻意思を失なつていた旨の諸事実を肯認することができ、右事実によると、本件婚姻が無効である旨の確認を求める被上告人の本訴請求を認容した原判決の判断は相当である(論旨引用の裁判例は本件に適切でない)。
原判決には、所論のような違法はなく、所論は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨・判断・事実の認定を非難するか、または、原判決の認定しない事実を前提として、これを非難するものであり、採用しがたい。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)